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「みんな、トナカイの準備は出来た?」
そんな姉さんの声が響いたのは決起会から二日後だった。
本番前の飛行ルートチェックを空中から行うために、訓練所のある東京訓練校からマイトナカイの運び込み。万一に備えて、時間は深夜0時過ぎ、正装の赤服を着ている。
「異常なし。いつでも行けるよ」
インカムから流れてくる栞姉の声に、順番に返事をしていく。問題ないの言葉がキッカリ六人分続くと、再び流れてくる栞姉の声。
「はい、あたしもオッケ。じゃあこれから埼玉支部への運び込みを始めます。何かあったらインカムに。全機私に続いてねー」
「了解」
最終点検で両手足に異常がないかを確認、栞姉の暖気する音に続けて、俺達もトナカイのエンジンを始動させた。
本当の名前はスカイグライダーと呼ぶらしいんだけど、サンタクロースの乗り物と言うことと、何となく呼び名が古いと言うことから【トナカイ】と、そう呼んでいる人が多いらしい。
目の前の風避け用のガラス。そこの角に、栞姉が作った予定飛行経路を迷わないようにかざすと、ハンドルを握り込む。
「じゃあ、出発!」
掛け声と共に全員が地面を蹴り上げ、七台のトナカイがふわりと舞い上がると縦列で動き始めた。
「んー、今日くらい本番も晴れてくれると良いんだけどねー。あ、星キレー」
ひとり、のんびりモードの栞姉。だが、続く六機はただただ愚直に栞姉の後を追う。
何時もの訓練所とは違う空に緊張してしまって、星空を楽しむ余裕なんて何処にもない。
横風に煽られて若干ルートから外れる者も結構いて、そのたびに進路変更を行っては、危なっかしくルートに戻る。
そんな姿に、肩を落とすのは勿論リーダーの栞姉だ。
「クリスマスはプレゼントも持ってるんだからねー。明日から訓練飛行三日しかないから、それまでに馴れておくように! 訓練ではきちんと出来てるんだから」
「り、了解」
あと、三日。それで本番か。
不安を残した四班の初飛行は、それが払拭されることが無いまま、埼玉支部へと到着、解散となった。
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