第二章

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「みんな、トナカイの準備は出来た?」  そんな姉さんの声が響いたのは決起会から二日後だった。  本番前の飛行ルートチェックを空中から行うために、訓練所のある東京訓練校からマイトナカイの運び込み。万一に備えて、時間は深夜0時過ぎ、正装の赤服を着ている。 「異常なし。いつでも行けるよ」  インカムから流れてくる栞姉の声に、順番に返事をしていく。問題ないの言葉がキッカリ六人分続くと、再び流れてくる栞姉の声。 「はい、あたしもオッケ。じゃあこれから埼玉支部への運び込みを始めます。何かあったらインカムに。全機私に続いてねー」 「了解」  最終点検で両手足に異常がないかを確認、栞姉の暖気する音に続けて、俺達もトナカイのエンジンを始動させた。  本当の名前はスカイグライダーと呼ぶらしいんだけど、サンタクロースの乗り物と言うことと、何となく呼び名が古いと言うことから【トナカイ】と、そう呼んでいる人が多いらしい。  目の前の風避け用のガラス。そこの角に、栞姉が作った予定飛行経路を迷わないようにかざすと、ハンドルを握り込む。 「じゃあ、出発!」  掛け声と共に全員が地面を蹴り上げ、七台のトナカイがふわりと舞い上がると縦列で動き始めた。 「んー、今日くらい本番も晴れてくれると良いんだけどねー。あ、星キレー」  ひとり、のんびりモードの栞姉。だが、続く六機はただただ愚直に栞姉の後を追う。  何時もの訓練所とは違う空に緊張してしまって、星空を楽しむ余裕なんて何処にもない。  横風に煽られて若干ルートから外れる者も結構いて、そのたびに進路変更を行っては、危なっかしくルートに戻る。  そんな姿に、肩を落とすのは勿論リーダーの栞姉だ。 「クリスマスはプレゼントも持ってるんだからねー。明日から訓練飛行三日しかないから、それまでに馴れておくように! 訓練ではきちんと出来てるんだから」 「り、了解」  あと、三日。それで本番か。  不安を残した四班の初飛行は、それが払拭されることが無いまま、埼玉支部へと到着、解散となった。
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