偽録

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―第三区 陰陽機関― 「お早う御座います」 「おう、お早う。今日も早いな」  何時もの日課である使い魔召喚の儀式が失敗に終わり、屋敷に猫(猫又)を置いて来た奏は、仕事先である第三区の陰陽機関を訪れていた。  陰陽機関とは、文字通り陰陽師達の仕事の場であり、各部署によって仕事の内容は異なっている。  特に、現在、奏が勤めている機関は第三区から第五区にかけて、妖怪達による被害報告書を整理、若しくは現地を調査し、報告書の内容を確認するといった、いわば、調査隊といっても良いだろう。  妖怪を討伐するという意味では、陰陽師として落伍者の烙印を押された奏だったが、前記の通り、卓上の勉に関しては全く問題は無かった。  ならば、人々の生活する地区の治安を守る意味でも、この調査隊として機能するこの機関は、奏にとって願ってもない場所でもあった。
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