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「よ、奏。今日も失敗したのか?」
と、席に着いた奏の背中をガタイのいい、顎髭を蓄えた男がポンと叩く。
あいさつ程度の考えでの発言だったのだろうが、今日『も』という言葉に、奏はジト目で後ろにいる男を睨み付けた。
「卜部(うらべ)さん。今日『も』は余計ですよ」
「おっと、これは失言だったな。はっはっは、すまんすまん、あまり気にしないでくれ」
睨み付けられた卜部はというと、奏の言葉を軽く受け流すと、奏と同じように自分の席に着く。
この遣り取りも、奏がこの部署に来てからの日課のようなものだった。
「一応、言っておきますけど、今日は少し成果が上がったんですよ」
席に座って、手元の資料に目を通していた卜部に声をかける。
すると、先程の成果が上がったという言葉が気になったのだろう。
手元の資料から視線を外すと、興味深そうに奏の方へと視線を向けた。
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