偽録

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―プロローク―  この世界は良く出来ていると、私は常々思う。  この世界に存在する二つの勢力、人間と妖怪の関係。  妖怪が人間を襲い、人間が妖怪を退治する。  この二つを以って、世界の均等が保たれていると言っても過言ではない。  退治という名目の戦いの中で、人間は技術を高め、妖怪もまた人を喰らう事で己の存在を示し、より強大な存在となる。  何年、何十年、何百年と経った今でも変わる事のないこの関係性に誰もが疑問を抱こうとはせず、それを常識的なものとして捉えている事は、考える事を放棄しているといって良いだろう。  しかし、思考の放棄を、私は否定することは出来ない。  かくいう私も、そんな彼等・彼女等と同じ考えだったのだから。
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