偽録

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―ニャー!!― 「え、ちょっ!! ちょっと待って!! 待ってったら!! まっ!!」  突然襲い掛かってきた黒い物体に押し倒され、思わず声を荒げた奏だが、次の瞬間、それが杞憂に終わった事に気付いた。  黒い物体……正確には黒色の毛並をした、比較的小型の、しかし尻尾が二つに分かれた猫が、自分に甘える様に擦り寄っていた事に気付いたからだ。  互いの頬を擦り合わせる様に、甘えた鳴き声を漏らし、一旦離れたかと思いきや、奏の鼻先をペロリと舐め、再び頬を擦り合わせる猫に、奏は一瞬呆然とした表情を浮かべながらも、残念といわんばかりに溜息を漏らした。 「あーあ、今日も失敗かぁ」
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