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某国雪山。
「ハァハァハァ」
二人の少年少女が走っていた。後ろに複数人の男達を連れて。
「奴等を逃がすな!!」
男達が叫ぶ
「ハァハァ、リーシァ。お前一人だけでも、逃げてくれ…。お前の『空間転移能力』があればお前だけは逃げられる」
少年が少女に告げる。
「嫌だ!」
少女は泣きながら言う
「私が逃げれてもアウロスが逃げられないんじゃ意味がないよ!」
「大丈夫、安心しろ。俺は『サイキッカー』だぞ?しかもレベル10の」
アウロスはリーシアの頭をわしわしと強めに撫でながら言った。勿論走りながら。
「うん、分かった。ランク6のレベル10なんてあんまり誇れる数字じゃないけど」
「ランク10でレベル2の不安定な能力しか使えないお前よりはましだと思うぞ?」
アウロスは笑顔で皮肉っぽく言った。
―タァン
雪山に乾いた発砲音が響く。
「銃まで使い始めたってことはもう俺らを『廃棄』するつもりだな、奴等。雪崩でも起こすつもりか」
アウロスが憎々しげに男達がいる方向を睨みつける。そして、ただ一言。
「燃やし尽くしてやる」
―ドンッ
アウロスの言葉に呼応するかのように、雪山が突然グラグラと振動し始めた。
「リーシァ」
アウロスはリーシァの方を見て言った。
「今ここの雪山の下の方にあるマグマを無理矢理地上にあげてる。ここは危険だ。まあ、マグマなんかなくたっていつも危険だけどな」
アウロスがニヒヒと笑った。そしてすぐに真面目な顔になり、言葉を続けた。
「だからお前は日本に行け。法治国家だったか?とりあえず日本は安全らしい。分かったか?」
「…分かった」
リーシアは涙を流しながら、だが力強く頷いた。そして、パンッという破裂音と同時にリーシァは姿を消した。アウロスはそれを見届けて、
「しかし…マグマはやりすぎたかな?それより、キタラ達はちゃんと逃げれたかな…これに巻き込まれなきゃいいけど」
マグマが山頂から吹き出してくる。
「さて、いっちょ気張るか!!」少年はマグマに指を向ける。そして、まるでオーケストラの指揮者が奏者たちを誘導するかのように、マグマを操り始めた。
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