懐の中の綻び

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魔界とのつながりもここら辺からなのかもしれない。より多くの力を有する魔を作ることで相対する光の神・天照の降臨を促す。 全ては柚木家の何代にも亘った皇家の乗っ取り。日本国を天照の国に戻すために逆に闇を呼んでしまったことになる。 皮肉な話だ・・・自分たちが神となりたいがために凌駕されて魔物となり下がる。ミイラ取りがミイラになるというわけか。 しかも時代は変わり今上天皇家は神ではなく象徴天皇だ。 神格化される必要が無くなり、国の顔となり外交のアイテムの1つとなっている。 柚木家が求めた形ではなくなっているのにその時代に有栖は生れ、柚木家の先代が引き起こした尻拭いを『神』としてしなければならないというのか・・・。 愚か過ぎる・・・有栖が可哀想だ。 有栖川靫のアルバムを見つけた・・・幼いころの写真。美しいが何やら近寄りがたい感じの靫に対し隣で微笑む母・結の姿。後でこれをあげはにも見せよう。 有栖川靫は確かに有栖に似ている。凛とした所も近寄りがたい雰囲気も、いかにも深層の姫らしい。 靫は母を愛していて、父と駆け落ちした時裏切られたと呪いをかけたと言っていた。靫程の力ならすぐ殺されたかもしれないのに・・・なぜ胡蝶の力を借りないと殺せなかったのか。 有栖のアルバムが出てきた。小さい時はかわいく笑っていたんだな。お屋敷の全員写真に鴻池舞子と七夜の姿があった。 生れたばかりの有栖を抱いた靫、その隣に聖太郎。使用人を含めた周りの端の方に七夜親子が・・・七夜が小学生位だ。 一緒に住んでいたのか?七夜は14歳くらいに父に連れてこられたと言っていたが・・・それは嘘か。愛人と正妻が一緒に住む屋敷等・・・地獄の様だったに違いない。有栖に兄だと紹介したのがその位と言うことか。 斎宮と言われた有栖川靫もこの屋敷で嫉妬とに苦しみ魔に陵駕されたのかもしれない。 後ろから声がした。 「こんなところにいらしたんですか?十六夜さん、お出かけだと言っていたのに」
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