懐の中の綻び

6/15
前へ
/24ページ
次へ
「恐れながらも自分たちがコントロールできなくなった闇の穴を塞いで欲しかったのだろう。身勝手な話だ」 「お前の主は誰だ!答えろ!」 「ぐはっ!」 土蔵の高い窓から胡蝶の頭が銃で撃ち抜かれた。すぐ窓を見たがもう人影もない。 「くそっ!」 追いかけようとしたが、有栖が肩を掴んで止めた。 「十六夜、行っても捕まらない・・・」 「胡蝶・・・やっぱり人間じゃなかった」 床に広がる黒いドロドロした液体を見ながら呟いた。 「誰が主だったのか・・・わからず仕舞だったな」 黒兎は残念そうに云った。 「なんとなくわかってきた・・・白い集団は三大天使の名を名乗っていた。胡蝶はその中では『ガブリエル』、メシア(救世主)の誕生を告知する役目を負っている。それに唯一の女性の天使だ。  ことあるごとにボクにいろいろなことを教えてきた。それが100年生きる理由だったんだろうか・・・つらい役目だな」 「そうするとあとは最強大天使ミカエルとラファエルだな」 「あと、黒の集団のルシフェルもまだわかっていない」 「もう父上や母上、おじい様も信じてきたのに・・・この家自体が皇家の闇の仕事を請け負う家だったなんて・・・何も聞いてなかった」 「その巻物はいらないな・・どう塞ぐかは胡蝶が語ってくれた」 「有栖行こう」 「若、我々がすることは変わりません。穴を塞いで闇を封じることです」 「ああ・・・そうだな」 もう引き返す道はない。仲間たちとともに前に進み平穏な日々を取り戻すだけだ。 三人は屋敷に向かって歩いて行った。その背中には迷いはなかった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加