懐の中の綻び

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屋敷に戻ると誰もが眠りについていて静かだ。 黒兎と俺は部屋に帰ってわら人形を片づけていた。 有栖が式神を宿してコピーを作り、黒兎が式神に法力で経を巻きつけて人形が生きているように動かせた。 心臓の位置を正確に何度も突き立てているのを見ても気持ちのいいものではない。 同じ時間に黒兎と同時に刺されているのだから犯人は胡蝶以外の二人の人物がそれぞれ自分たちの暗殺を同時刻に行っている。 この屋敷内のミカエルとラファエル・・・いったい誰なのか。 アゲハの様子が気になって部屋を訪ねたいが夜間は白兎の張った結界が二重になっていて近づけない。敵にしてもおなじだろうから安心だ。 少なからず胡蝶のことは動揺している。明日から心を落ち着かせていなければならない。蒸し暑い空気が部屋に充満していた屋敷の部屋は大きいのでラテは虎のまま寝そべっている。 「十六夜、胡蝶は死んだのにゃ?」 「ああ・・・人間じゃなかった。何を信じていいやらわからなくなってきたよ」 「みぃは十六夜の味方にゃ」 「ラテのことは信じてるよ」 でかいラテに寄りかかっていたらそのまま眠ってしまった。  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇ 《黒兎side》 黒兎はわら人形を片づけながら柚木家に仕えてきた自分の祖先のことを考えていた。 三日月家も実家の満月家も・・・柚木家の暗部を知っていたのだろうか? もしそうなら自分の存在も闇の側ではないかと恐ろしく感じた。 自分ですら恐ろしいと思ったのに・・・あの若がどれだけ傷ついただろうと思うと胸が痛んだ。 柚木家の儀式で若が傷ついて『靫』というもう一人の存在を生み出した。靫はどうなるのだろう。もしこの事件が終わったら靫は存在を失うのだろうか? ドアをノックする音がする。こんな時間に・・・十六夜か? ドアの外にはには靫がいた。今考えていたからだろうか・・・何もかも見透かされているようで怖い・・・でもそんな靫に惹かれてしまう。怖いけど、いとおしい存在。 「どうしました?若はショックを受けていらっしゃったでしょう。意識を手放されたのですね」 「ああ・・・ずっとアイツ、頑張ってたからな・・・オレになる時間がなかった」 「まぁ、お入りなさい。夜風は体に毒だ」 靫は塞いだ顔で部屋に入ってきた。
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