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朝起きた時に若でありませんように・・・うっすら怖々眼を開ける。
黒髪の靫が寝息を立てている。
今度いつ会えるかわからないと思うと手放したくなくて靫の身体が壊れてしまうくらい抱いた。辛い思いをさせてしまったと後悔する。髪をそっと撫でていると緋色の眼がこちらを見た。
「靫様・・・お目覚めですか?」
まだ気だるそうにしている。
「んん・・・身体が痛いし、腰が重い・・・」
「そうでしょうね、後でマッサージでも呼びましょうか?」
「そんなことしたら十六夜にバレルだろ」
「バレるの嫌ですか?」
「だって有栖が傷つく」
「優しんですね。昨日敵になったら殺せるかと言ったのに・・・」
「うるさいっ!!」
「お前ドSだろ!昨日もイジワルばっかしてきて」
「ドMな貴方に合わせているだけですよ」
「好みじゃないっ!」
「じゃあ、そうしておきますよ」
コイツとの他愛のない会話などした事がなかった。
黒兎が手を取りキスを落としながら上目遣いで言う。
「私のダークアリスがルシフェルならいくらでも貴方のために人殺しも厭わない」
「ダークアリスか…」
「若を無きものにして靫様の躰を自分一人のものにするためなら…若と十六夜を裏切ってもいい」
「黒兎…」
「貴方は最初から若の躰を乗っ取ることを考えていたでしょう。それを思わなくなったのは十六夜に情があるからですか?十六夜に想いを残りながら私の元を訪れ、抱かれる貴方が憎い」
「十六夜に想いがあるわけじゃない!」
「私は欲深いんです。貴方は心が二つ、躰は一つだ。貴方の躰を独り占めしたい」
「黒兎…」
「俺がずっといれば満足するか?」
「貴方が私だけのものにしておきたい」
「黒兎のためなら有栖を乗っとろう」
「靫さま…」
朝日の中に二人の影はまた重なり合う。それは深い闇の中への扉が開かれようとしていた。
「とにかく部屋に行ってよく休んだ方がいい。ただし若に変わらない事」
「ああ…」
「十六夜を裏切るのは辛いですか?」
「いや、最初からそうしようと思っていたことだから」
「私達の未来のために…」
「休んでくる」
「ゆっくりしてください」
黒兎は靫の後ろ姿を見えなくなるまで見送った。
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