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8月ももう終わりを迎えようとしていた。もうすぐ夏休みも終わる。
夏の間中有栖が部屋から出る事も無かった。
七夜さんに指定されたのは七夜さんの部屋に夜の11時。白兎も同席する。
七夜さんの部屋は東棟の奥の一階。使用人部屋の中では大きい。ひと家族が住んでいる位の風呂場もキッチンもあるちょっとしたマンションの様だ。
訪ねていくとリビングに通された。シンプルな家具に何枚も燕尾服が掛かっている。
「今アイロンをかけていたんだ散らかっていてすまないね」
「いえ、こんな時間に訪ねたのはこちらなんですから」
「じゃあここに座って・・・いま麦茶出すよ」
「いたって庶民的。この屋敷でホッとする気がする」
「話って何?この屋敷の中に地獄門が開かれているはずなんですが・・・七夜さんなら知っていると思って」
「『地獄門』なんて非科学的な話し・・・」
「否定したって駄目ですよ。貴方の素性も大体わかりましたし、貴方はあの御狐様の祠で会った斎宮に『月読』と名指しされたんです。お母様の舞子さんやお爺さんの常蓮さんから聞いていませんか」
「誤魔化しても無駄ってことだね。やっぱり十六夜くんはキレる男だったね。最初にあった時からこの家の愚かしい所を暴いてくれるんじゃないかと期待していたよ」
さっきの喋り方とは違ったトーンで話し始めた。
「常蓮からは何と聞いてるの?」
「穴の塞ぐ方法とか」
「有栖がいないと塞がらないって知ってるんだ」
七夜さんが有栖を初めて名前で呼んだ。なんか少し嫌悪感がある。
「斎宮も余計なことお言ってくれたよ。私が『月読』だって・・・君たちの中で一気に不信感が広がっただろう?」
「まぁ、そうやな」
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