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「ただ、私の場合は特殊で。この業界じゃ《色落ち(ガラード)》なんて言うんだけども。私には一つの才能しかない。あらゆる法則を色とりどりに変えるような万能性が無いわけ」
「唯一使えるのが黒魔術?」一真の問いを玄架は首肯する、のみならず付け足すように、
「そ。だけど、黒魔術なら誰よりも上手く使える。破壊する事、戦闘向きの力なわけ。そうね、自衛隊の一個師団くらいなら正面から叩き潰せるくらい」
「……すげぇな」
率直な感想だろう。嘘を吐いているとは思わない辺り根の正直な男なんだろうと、ぼくは彼を分析した。
だけど、玄架に正面から立ち向かえてしまう月もまた凄まじい力の持ち主である筈だ。そこに気付かない辺りは、悪い意味で月との付き合いに慣れてしまっているのだろう。第一、玄架は戦闘向きの力を持ってはいるが、戦闘が本職では無い。
「何を言っているの。そのくらいなら月にでも出来るんじゃない?」
「やってみた事ないから分からない」
是非、やらないで頂きたいと切に願う。
「でも、玄架には勝てなかったし……」
「ん? あの言葉で武装解除した時の事を言っているの?」
どうも、そうらしい。まぁ、あれはなんか一種のチートみたいなものじゃないかと、ぼくは思うけど。もちろん、そんな便利な力があるならば魔術で戦うなんてこと馬鹿馬鹿しくてやってられなくなるだろう。
「あれはねぇ。そうそう使えるものでもないし。大体、基本的に日本語が使える人間にしか通用しないから。そっちの式神さんには通用しないし」
「そうなの?」
「そうなの。大体、言葉で操るなんてのは、むしろそちらさんの方が専門なんじゃないの?」
「確かに、言霊にはそういう力もある」
つまり、逆の立場だったら玄架の方が嵌められていたかもしれないという事だろう。それは単なる力の差とかではなく、読み合いのようなものなのだろう。
常に相手の一歩先を読み、効率的な対策を練る。もしかして、この会話の裏には相手の技術を知る為の探り合いが含まれているんじゃないかと僕は勘ぐった。まぁ、また戦うような機会があるかは別として。
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