第2話

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「ふぅむ……まぁ、お互いの事は何となくわかったけど、どうにもねぇ――なんか、やっぱしズレが生じている気がするわね。第一、互いの世界の事をこれまで全く聞いた事が無かったなんてのが吃驚よ。私も自慢じゃないけど、すごく強い部類に入る魔術師なのよね。月もそうでしょう?」 「ど、どうかな」何故か、やたらと謙遜する月に玄架は吹き出した。 「どうしちゃったの。さっき戦ってた時は、死んでも負けを認めないみたいな威勢の良さがあったのに」 「こいつは、本当は結構な人見知り屋さんなんだ。戦っている時は、まぁ――負けるわけにはいかないって気持ちが働くんだろうな」 「それは陰陽師としてのプライドって事で?」  玄架の問いに一真は返答に窮した。戦いの中においての月の気丈さに関する説明の時の間といい、秘密を抱えているのは明らかだった。そして僕に分かるような事を玄架が見逃すはずが無い。 「ま、言いたくないなら――」 「うぅん。ちゃんと言う。玄架だけに色々自分の事情を話させたのに、それじゃ公平じゃない」 「分かってるじゃない」玄架は実に楽しそうに笑った。最初、戦ってた時はどうなるかと思ったが、意外と気は合いそうだ。 「さっき言った物の怪の話と繋がるんだけど。陰陽師は物の怪を討つのを仕事としている。その中で私は陰陽少女という二つ名を持っているの」  陰陽の界に関する話をした時よりも一段と深い闇に根を下したかのように、月の声は低かった。 「私は生まれつき、月の神の加護を受けている。物の怪を討つための強力な力があると言えばいいのかな? 私の式神には日の神の加護がある。こちらも同様、物の怪を討つための力」  それだけ聞くと、いい事づくめのようにしか聞こえなかった。玄架の抱える事情から受ける印象とはまるで逆。だが、勿論それだけで話は終わらない。 「この加護は同時に呪いでもある。それを他人に語るのは“忌事”とされているんだけどね。玄架はそれに苑樹も他人じゃないから」  ぎくりとぼくは肩を震わせた。途端、ゴッと頭に何かがめり込んだ。 「狸寝入りでこっそり人のやり取りを聞こう等とは、趣味が悪いわよ」
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