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「……何の用?」
「もう帰ってんだろ?」
「そうだけど……何?」
「よし。あと五分で着くから」
「はあ!?」
素っ頓狂な私の声は届いたのか否か。
長瀬は言うだけ言って、さっさと電話を切ったのだ。
ツー、ツー……、耳から聞こえる電子音に、私はわなわなと体を震わせた。
一体、どこまでオレサマなのよ、あのバカは!
声にならない叫びを心の中であげて、携帯をばちん、と閉じた。
この疲労感の中で、長瀬に付き合う余裕はないのに。
冷静になろうと、ふうっ、と息を大きく吐いて、辺りを見回す。
「……とりあえず、片付ける、か……」
がしがし頭をかいた後、近くにあったヘアゴムを手に取り、髪を束ねて行動を開始した。
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