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私の質問に、「んー」と少し考える素振りを見せた長瀬。
こくり、お酒を飲み込んでから、私に向き直った。
「なーんか、煮詰まってそうだったから。会社で聞いたって弱音なんて絶対吐かねーだろ、羽村は。ちょっと気になったんだよ」
そう言って、わしわしと、私の頭を乱した。
その表情は、ちょっと悪戯っぽくて、でもすごく優しくて、どうしていいかわからなくなるくらい。
「……ありがと」
自然と溢れた感謝の言葉に、長瀬は一瞬驚いた顔を見せた。
けれどすぐに、また笑ってくれた。
その柔らかい笑みに、胸のトゲは融けて消えた。
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