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ベッドで横になっている私の頭を、長瀬の手がやさしく撫でている。
……それが、昨夜の記憶の、最後。
あまりにも優しい長瀬に、一瞬、見返りが恐ろしい、なんて思っていた私。
その予想とは裏腹に、長瀬は何も要求してはこなかった。
きっと、私が眠った後に自分の家に戻ったんだろう。
出社時刻まで、そう時間はなかったに違いない。
なのに、最後まで私に付き合ってくれた。
自分の睡眠時間を削ってまで、傍にいてくれた。
長瀬の心情や思惑、意図も何もわからない。
けれど。
一緒に飲む空気が。
隣にいてくれる安心感が。
頭を撫でるぬくもりが。
私を包み込むように癒してくれたことだけは、疑いようのない事実だった。
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