勝負の時

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ドアの隙間から光が漏れている。 「今日はいるのかな」 一応ノックをしてドアを開けてみた。 電気がついていても、いるとは限らないんだけど。 唯一生活感のするその部屋は、仕事関係の物で溢れ返っていて、片付けてあげたくても不用意に触れるわけにいかない。 ただ、ソファーの上の毛布を畳んで、飲みかけのコーヒーカップを回収するくらい。 ノックにもドアの開く音にも何の反応もしないで、もくもくと佐伯さんはデスクの前で仕事をしていた。 「佐伯さん……」 「……」 無反応。 いつものことだから別にいいんだけど、それでも昨日書いたメモがそのままソファーの前のテーブルに置き去りで、返事も何もない。 .
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