勝負の時

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正直自分の存在意義を見失いそうになる。 仕事に集中している佐伯さんに、何を言っても無駄なことはわかっているけど、それでも私が来たことにも、メモを残したことにも無反応だとやっぱりため息を吐きたくもなる。 コーヒーカップを持って書斎から退散。 キッチンに戻って洗い、もうすることがなくなった。 「帰ろう」 この寂しいリビングに1人ではいたくなくて、鞄を手に玄関へ向かった。 途中書斎の前を通って、玄関でサンダルを履こうとしたところで書斎のドアが開いた。 部屋から出てきた佐伯さんと目があった。 「あ、幸恵。いらっしゃい」 「う、うん」 たった今帰ろうとしていたのに……。 笑顔で手を差し伸べられて、ついその手を取ってしまった。 .
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