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初めて目にしたバスケをしている彼の姿は、キラキラと輝いていた。
上着を脱いで、下に着ていたトレーナーの袖をまくる。
少し筋肉のついた腕がそこから現れる。
「――でも、それも後少しなんですよ」
と言って、再びボールをシュートする。
ボールがコロコロと転がって、私の足元へやって来た。
私はそのボールを手に持つと、顔を上げて彼に視線を向けた。
「桐原君、それってどういうこと? バスケが好きなら、もっと続ければいいじゃない?」
「そうなんですけど、理紗に一緒に居る時間が少ないから、バスケを辞めてくれって言われたんですよね」
少し辛そうな表情を浮かべながら、彼は私に両手を差し出した。
だから私はその腕に、手に抱えたボールを投げた。
ポーンッ!
でもコントロールの悪い私の投げたボール。
彼の方ではなく、横道を反れて反対側に飛んでいく……。
「プッ!」
と笑みを浮かべた彼は、そのボールを追っかけていった。
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