174人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
そんな彼の姿を見ながら、私はまた泣きそうになっていた。
理紗は好きな人の楽しみを奪って、それでいいのだろうか?
ずっと近くで桐原君のことを見ていたなら、彼がどんなにバスケが好きなのか分かっていたはずなのに……
「ああっー! もっと試合したかったなぁ」
そう言って彼は、またネットにシュートを決める。
一度も外すことなく、ネットから落ちたボールを手に取っては確実にそこにシュートを決める。
そんな彼の姿が眩しすぎて、目を細めた。
その瞬間、2人きりの時間に終わりを告げるかのように、誰かの携帯が鳴り響いた……。
……でもよく耳を澄ませば、私と彼の携帯が同時に鳴っていることが分かる。
今流行の着うたの私と、ただの電波音の彼の携帯。
……ゴクリと息を呑み込むと、持っていたバッグから携帯を取り出した。
彼は眉間に皺を寄せたまま、ズボンのポケットから携帯を取り出している。
互いに沈黙のまま、発信番号の確認をした。
「……木綿先輩だわ」
「こっちは、理紗ですね」
互いにポツリとそう呟く。
最初のコメントを投稿しよう!