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本当は理紗や木綿先輩のことを考えると、彼と“楽しむ” ということが出来なかったのかもしれない。
だから私は左右に首を振りながら……何度も“否定”という合図を彼に送り続ける。
そして、この場を後退りする。
でも、――コツンと何かにぶつかって足は止まった。
反射的に思わず身体が蹌踉(よろけ)て傾いた。
「危ないですよ」
咄嗟に掴まれた手首に、彼の重圧を感じた。
「ビリヤードがそんなに嫌なら、他のゲームにします?」
「ううん、……もう帰りたい」
彼にそう訴えかけた。
長く彼と居れば居るほど、取り返しのつかないことになるのは間違いない。
今ならまだ間に合うかもしれない。
今ならまだ彼女が許してくれるかもしれない。
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