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駅まで無言で足を進める私達。
時々擦れ違うカップルや学生達がいた。
その子達には、私と彼の関係はどんな風に映ってるのかな?
カップルに見えてる?
それとも、姉弟……?
教師と生徒とかだったりしたら、軽くショックかな。
―――…
「お姉さん、家まで送りましょうか?」
気がつくと駅まで到着していて、彼にそう言われた。
私は首を軽く振ると、重い口を開いた。
「大丈夫よ。家までちゃんと帰れるから……」
「でも理紗に言い訳をするなら、オレからきちんと事情を説明しましょうか?」
「平気よ……理紗だってきっと分かってくれるわ。逸れたって言えばいいのよ」
なんて、……彼女に、そんな言い訳が通用しないことぐらい分かっていた。
けど、彼と理紗が話す前に私が話さなければならないんだ。
こういう風になることを予測出来たのに、彼と逃げ出したのは私自身なのだから――
「だったら何かあったら連絡して下さい。いつでも飛んで行きますから!」
彼はそう言って、私の携帯を返してくれた。
彼に奪い取られた時と戻ってきた時の携帯の重さの変化に気がついたのは、電車に乗ってからだった。
可愛らしく、グリーンの服に身を包んだストラップが、嬉しそうに私に視線を向けていたのだ。
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