木綿先輩の心…

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「木綿先輩、いらっしゃい」 と笑顔を前面に出して、この気持ちを隠すように言う私。 そんな私もまた、仮面をつけているのかもしれない。 「お茶でも、淹れますね?」 食べていた食器を片しながら、木綿先輩に話しかける。 女優並みの演技とは、このことかもしれない。 「理香っ……!」 けど食器を片すこともそれ以上演技を続けることも、木綿先輩はさせてくれない。 そのまま包み込まれた身体がピクリと反応する。 甘い吐息が耳を伝わって、心へと流れてくる気がした。 気がついた時、零れ落ちる涙を止めることが出来ないでいた。 「心配した――」 耳に届いた言葉から、その言葉の重みを図り知る。 木綿先輩の目が赤く充血していた。 「木綿先輩、寝てないんですか?」 そっと言葉を紡ぐと、身体に回された手に力を込められた。 私に、それを拒むことは許されない……。 キツク抱き締められて、……胸が苦しくなった。
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