木綿先輩の心…

8/11

174人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
その瞬間、……木綿先輩の体が揺らいだけどすぐに体勢を立て直した。 大きく目を見開いて、何だかとても悲しそうな顔をしている。 「……理香?」 「すみませんっ! でも怖いんです……そのっ、森さんとのことを思い出して……」 「――あ、そうだよな……ごめんな」 言い訳にしかならない言い訳をして、私はこの場を逃れた。 それに理解を示してくれた木綿先輩は、申し訳そうな顔をしている。 “ごめんな” ……その言葉を木綿先輩に言わせてしまった私。 何て、酷い女なんだろう。 だって、森さんのことなんか思い出す訳がなかった。 ……そう私が思い出したのは、彼とのことだけ。 彼にされた、“2度のキス” のこと………… 逢いたい…… どうしようもないぐらい、彼に逢いたくてたまらない…… 「森先輩のこと、ごめんな?」 「……えっ?」 「ちゃんと、話すから」 と言いながら頭を下げる木綿先輩。 これでもかっていうぐらいに、頭を下げ続けている……
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

174人が本棚に入れています
本棚に追加