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言葉を失うとはこのことだろう。
なんて言葉をかけたらいいのか分からなくて、ただ木綿先輩の声に耳を傾けていた。
「あの時の俺は、色々あって。……そして悪い連中とも付き合ってたんだ」
“色々”
その言葉の意味を知りたくて、木綿先輩を強く見つめた。
木綿先輩の瞳は、動揺が隠せないみたいで時折左右に揺れている。
「やっぱり止めるべきだったんだよな。でも怖くて何も言えなかった。中には、族関係の人とかもいたみたいだし」
「その女の人はどうなったんですか?」
私がそう聞くと、木綿先輩はゆっくりと首を左右に振る。
この時の木綿先輩は、本当に辛そうな顔をしていた。
「……自殺したんだ」
「えっ?」
「未遂だったんだけどな」
“自殺”
その言葉はあまりに自分とかけ離れていて、この後何をどう口にしたらいいのか分からなかった。
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