木綿先輩の心…

10/11

174人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
言葉を失うとはこのことだろう。 なんて言葉をかけたらいいのか分からなくて、ただ木綿先輩の声に耳を傾けていた。 「あの時の俺は、色々あって。……そして悪い連中とも付き合ってたんだ」 “色々” その言葉の意味を知りたくて、木綿先輩を強く見つめた。 木綿先輩の瞳は、動揺が隠せないみたいで時折左右に揺れている。 「やっぱり止めるべきだったんだよな。でも怖くて何も言えなかった。中には、族関係の人とかもいたみたいだし」 「その女の人はどうなったんですか?」 私がそう聞くと、木綿先輩はゆっくりと首を左右に振る。 この時の木綿先輩は、本当に辛そうな顔をしていた。 「……自殺したんだ」 「えっ?」 「未遂だったんだけどな」 “自殺” その言葉はあまりに自分とかけ離れていて、この後何をどう口にしたらいいのか分からなかった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

174人が本棚に入れています
本棚に追加