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『鬼神』と呼ばれる、絶対無敵の肉体を持った男が、唸りをあげながら突き進んでいく。まるで自然災害だ。
地面を踏んだ衝撃だけで、木々を凪倒し、蜘蛛の巣のような亀裂を生み出す。息を吸うだけで、家屋がグラグラと揺れ動く。
もしかしたら、天災という言葉すら生温いのかもしれない。そんな青年がこの場に近づく度、全員の緊張が高まっていった。しかし、
「……そんな緊張する事ねぇさw 俺も、アイツと一緒なんだからよ」レイは笑顔を浮かべる。
「何だと?」
「俺もよぉ、ゲートちゃん。お前が憎くて憎くてしょうがねぇけどなぁ……今日の俺の標的はお前じゃねぇよ」
刹那、レイの瞳に殺気が帯びる。怒りでもなく、悪意でもない、純粋な殺意。矛先は、未だに宙に浮いている『喜笑』の元へ。
「俺の一張羅に……馬鹿参上だなんて落書きするのは、おめぇしかいねぇよなぁぁぁぁぁあ? アァ?」
全員の意志が一致した、と全員が理解した。そして、最強達が導き出した結論は至ってシンプルなものだった。
『喜笑』を消す。ただ、それだけ。
「分身……参上ぉw」
『りょーかいだ、本体』
レイが高らかに叫んだ直後、彼の周囲に百人もの分身が現れる。瞳は、赤と黒に彩られ、最初から本気だと嫌でも理解させた。
『さぁ、行くぜ!』
蟻の大軍を思わせる統率された動きは、瞬く間に空中の『喜笑』を囲むまで。四方八方を塞がれた青年は、鞠のように蹴られ続けた。
「ギョ、ガ、ゲォボ、ガハッ」
「どけ」呟いたのは、スー。彼の背後には、百の神と天使。全ての異形が魔力を限界まで凝縮させている。
ギュバ
音を超え、空気を切り裂く波動が『喜笑』を囲むレイごと消し飛ばした。影響力を遮断していなかったとはいえ、神の力で生み出された肉体を軽々と。
しかし、終わらない。まだ続く。「全てを試しましょう」ライトの真上に浮かぶのは、数千の処刑道具。
「ぇ、SM」
「死ね」
傷一つ無かった『喜笑』の身体が、細切れの肉塊へと変貌した。
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