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断末魔を響かせる間もなく、赤い噴水をキラキラと輝かせる肉。しかし、それも数瞬の内に修復されることだろう。
だから、そこを叩く。完全に無防備になったその瞬間を。最強達は、決して見逃さない。
『ハァァァァァァァァッッッ』
『鬼神』が吠えながら、身体に力を込めていく。レイが『鬼神』の力を超えるための数値を、右腕に宿す。ゲートの左腕に、嵐のような魔力が集約する。
狙うは、『喜笑』だったもの。三人は、同時に地面を蹴り上げた。その推進力は、クレーターを作るほどだった。
跳躍の速度は音を置き去りにし、肉塊。否、『喜笑』の元へと三人の身体が接近する。復活直後の事で、糸目が見開かれるが────
「死ね」ゲートの左腕が、『喜笑』の喉元めがけて突き出され、
「馬鹿はお前だろ」レイの右腕が、腹を狙って突き進み、
「オォォォォォォラァッッッ!!」『鬼神』の右腕が、彼の股間を容赦なく打ち砕いた。その刹那。
「~~~~~~~ッ、ッッッ、ッッッッッッッッッ!!!!!!」
『喜笑』の身体の周囲の空間が歪む。ぐにゃり、と螺旋を描いたかのように溶けて、乱れて、抉れていった。
強大すぎる力は、世界に果てのない影響を与えるものだ。『鬼神』やゲートの本気で世界が歪んだ事はあったが、それが同時に三人。
それが何を意味するのか。決まっている。世界が歪み、破壊され、作り出されるたった一つの世界は、『狭間の世界』。
『喜笑』は表現できないくらいの苦悶と激痛を浮かべ、抵抗も出来ずにその穴に飲み込まれていった。しかし、誰も後悔を顔に貼り付ける事はなく、
「……すっきりしたぜ!!」『鬼神』が笑顔で白い歯を見せる。
「そうですね。……ロゼには、新しいものを買いますか」ゲートは静かに瞳を伏せ、
「……まぁ、死んではなさそうだな」スーは、胸から一本の煙草を取り出して深く息を吸い込んだ。
「禁煙したんじゃなかったんですか?」
「ぇ」
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