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『喜笑』は道化なのか。それとも、最強達の中で二位という称号を持つ異端なのか。
そんな事を、私はよく聞かれる。
私は、恐らく、世界を掌握していると言っても過言ではない。世界で、誰よりも物知りでもあるだろう。
そんな私の……いや、私の虫達の答えはただ一つ。彼は、臆病だ。
え? それはおかしい? 臆病ならば、あんな怪物達にちょっかいなどかけやしない?
もっともな意見だと思う。私の虫達も、大いに頷いている。常人ならば、あんな怪物達には近寄ることすら躊躇する。
でも、それは。普通の人間の感性なのかもしれない。それに、私の言う臆病とは、また少し違うのだと思う。
『喜笑』は、未だに自分の力に怯えている。と、いうのが、私の持論。故に、それで周りが巻き込まれない事を証明する為に、最強にちょっかいを出す。
簡単に言えば、まぁ、『喜笑』は、私や『銃星』や……あの部屋の中でも弱い部類に入る人間には、あんな事はしない。
さっきの騒動も、そうだろう? 敢えて彼は、相手にするのが自殺に繋がる怪物にしか悪戯をしていなかっただろう?
自分の能力の強さに恐れる余り、過去の罪悪感に何時までも囚われてる故に。『喜笑』という男は、ああして周囲の強さを再確認するのだろうね。
何故って? 分からないのか? 私の虫が顎を鳴らして笑っている。
万が一、暴走してしまったら。世界中を、そう、平行世界すらも滅ぼすくらいに、彼の力が暴走してしまったら。
その時に、ちゃんと自分を殺してもらうように。その力があるかどうか、『喜笑』は自分も楽しみながら、ああやって力を確かめている。
ドラグさんがいる時には、ただ遊んでいただけだったけどね。そして、これは私の虫の話ではない。
全て、酒の席で『喜笑』自身で語った事。私と彼、『鬼神』もいた訳だが、「その時は、俺が殺してやる」だと。何とも切ない話だ。
『喜笑』の返事? あまり言いたくないな。だけれども、お金を貰ってるからには答えなくては……。
「ム、リ、でーす! 無理無理無理だぷぅ。え? お、ま、え、が俺を殺すぅ? なぁに格好付けてるんですかぁ? 脳筋野郎が俺を殺すな、ん、てぇ……不可能に決まってんだろバ―――――――カ!! ごみ。後、全部嘘ですぅ…………」
だって。恥ずかしい。
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