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気がついたら、知らない街にいた。
『喜笑』が意識を覚醒させ、大の字の状態から起き上がった時に最初に頭に浮かんだ言葉だった。
住宅街。グラバラスで生活をする中では、中央以外で見ることのない──どこか発展した街並みが立ち並んでいる。
最初は、ドラに吹き飛ばされたのかとも勘違いした。だが、ここまで綺麗な街並みを維持しているというのに、人の気配が全くしないというのは何事か。
その為、『喜笑』は自分が横たわっていた街を知らない街だと理解する。理解した所で、彼は薄い双眸をふらふらと動かし、
「つまり、ここは天国」
と一言。『喜笑』の表情は、相変わらず笑みを浮かべていた。それでも、幾分か残念そうな雰囲気も醸している。
「人は死ぬと……魂になるという話がある。そして、何か究極的に未練を残している時、霊体になるという話もある。つまり、俺は自分の身体を認識している。そこから導き出される結論……そう、俺が霊体になっているという事なのではないか?」
返事はない。『喜笑』の虚しい言葉は空気に溶け、消えていった。返ってきたのは、多大な空虚感。湧いてでたのは、
「……いや、俺が死ぬだなんて有り得ない。そう、有り得ないんだ。俺が死ぬとするならば、天使の腕の中か、まだみぬ俺の運命の人……いや、待て。ちょっと待て、あの天使が俺の運命の人ということは有り得ないだろうか? そして、どうだろうか? 今、この誰もいない世界で、一糸纏わぬ姿になるのは」
背徳を侵す奇妙な快感。この瞬間、青年は長い口上を並べながら、全裸になっていた。
下腹部がスースーして、風に揺れる逸物。同時、『喜笑』は踏み外してはいけないナニカを踏み外し、新しい世界の扉を開け放つ。
「…………素晴らしい……」
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