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少年の口から哄笑が漏れる。過去の過ちと今の不可解な状況を照らし合わせ、表情が歪んでいく。
「なんなんだこれは」
小さな呟きは、いったい誰に向けて放たれたものなのだろうか。それは誰にも、もしかしたら渇いた嗤いを発する少年にすら分からないのかもしれない。
今、確実な事があるとすれば。少年がこの世の全ての混濁と歪を煮込んだようなエガオを灯し、『喜笑』が世界の笑いを代表するような、ニコニコとした笑顔を浮かべている事だった。
「ハッ、なかなかどうして……イイ笑顔を浮かべるな、少年君よ。イイ……笑顔だよ、俺でもそこまで絶望的な笑顔を浮かべられるか分からんぞ? いや、無理だろうな…………待て。俺は、やってもいないのに、試してもいないのにだ。 それなのに、無理と断定? 何を? 俺はまさか未来の俺を否定した?」
「奇遇だね。僕も君みたいな、ニコニコとした笑顔は作れそうにないんだよ」
長くなりそうな台詞を己の言葉で遮る少年。対し、ゆらゆらと幽鬼のように、重心を安定させない『喜笑』は悲しげに返す。
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