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どうすればいいのか分からなかった。
自分の持つ力の本質を理解していく内に、この力をどうすればいいのか分からなくなった。
いや、元々分かっていた訳ではない。人が消えた街中で、泣きながらさまよい歩いた時から二年が経った今でも。
自分は呪われてる。誰の近くにも、どんな人間とでも接触は持ってはいけない。何故なら、この世の理から追放された存在なのだから。
少年は一人で生きた。とある貴族の息子のように捨てられた訳ではなく、自ら進んで。
深い闇の中。
少年はただただあの時の事を後悔し、両親や友人、見たこともない街の人間に謝罪する。
自分のせいだ。ごめんなさい。許してください。すみませんでした。どうか殺して下さい。どれだけ食わずとも、死なないです。自殺しても死なないです。生きたくないのに死ねないです。生きていることが苦しくてしょうがないです。
身体がいくら治ろうとも、心が壊れないとは限らない。少年の細い目から涙が枯れきった時、顔には狂った笑みが浮かんでいた。
否。笑顔しか浮かべられなくなっていた。完全な無表情にならなかったのは、一人だけだという現実に飲み込まれない為、過去の幸せを思い出していたからだろう。
早くにその思い出を捨てれた方が、少年にとってはどれだけ楽だったのか。しかし、そんな事は他人からすれば関係ない。世界からすれば関係ない。
故に、少年はその日も自身で作った真っ黒な空間に座り込む。もう何日この格好から動いていない? いや、それすらも少年にとっても関係ない────
「ふむ」
最初は幻聴かと思った。
「まぁ、アレだ……真っ黒な球体空間の周辺が、可笑しい現象に見舞われてると聞いてみれば……」
もう自分以外の声など一年以上も聞いていない。自分の声すらも、出し方を忘れてしまっていた。
少年の口からは掠れた音だけしか出なかった。同時に、強く。強く強く強く拒絶する。
真っ黒な空間の装甲を幾重にも張り、他人を拒絶。これだけの事をしてしまえば、もしかしたら自分ももうこの空間から出られないかもしれないのに。
だが、それでもいい。
また自分の力で誰かが犠牲になってしまうくらいなら。
もう誰も、自分に近寄らせない。寂しいけれど。仕方がない。
とまで考えた時には、少年が作り上げた空間は砕け散っていた。
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