最強達から逃げた笑顔の行き着いた先には

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天に浮かぶは、何十体とも言える天使や神級の群れ。ある神は炎のように真っ赤な髪を揺らし、ある天使は数十メートルにも及ぶ翼を広げていた。 そんな神秘的な光景の中心に、男はいた。ホストのような風貌をし、普段は気怠げな雰囲気を醸すスー・ゼラム。 しかし、今のスーの表情が映すのは怒り。鬼気迫る表情は、あのライトすらも息をのむ程に──怖かった。 「……ライトよぉ。ソイツは……俺がもらうぜ!!」 刹那。ライトの真後ろに閃光が降り注ぐ。あまりに突然のことで、彼女は自分を狙ったのではないかと邪推したが、そうではないらしい。 真後ろから「あ、あんぎゃああああああぁぁぁぁぁぁッッッ」と、声が響いたのを確認したのだ。それが何を意味するのか分からないほどライトは愚鈍でない。 距離をとるついでに、神の首を落とす大斧を爆心地に振り下ろす。空間に浮かぶ形で下ろされた斧の一撃は、大地を粉砕し、土の雪崩が天を襲った。 「これだけじゃ死なない……だろ?」 それでもスーは攻撃を止めない。神話に語り継がれる神々の裁きを加えても、天使の息吹きを喰らわせても。 拳を繰り出し、流れるように上段蹴り。勢いを殺さず、後ろ回し蹴り。続けざまに傍目からは目視できない速度で、連撃。 空中で演武をする様は遊んでいるようにしか見えないが、今もその攻撃は『喜笑』を捉えて離さなかった。悲鳴は土砂の轟音の隙間から、絶え間なく聞こえ── ライトはトドメとばかりに、鎖の滝を声の方向へと墜落させた。これが過去のスタージャのツートップ。 あのレイですらも、この二人が揃ったら敗北を喫していたかもしれない。そう思わせるくらい、圧倒的で強すぎる二人だ。 しかし、それから数秒経っても呻き声も何も聞こえない状況に、二人は首を傾げる。あれでなんのダメージも受けていないわけは無いだろうが、死にはしない。と思っていたが──── 「確認しなさい」 「ハ? トドメはお前が刺したん」 「確認しなさい。三度目はありませんよ」 「…………はい」
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