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無表情で静かに命令を下すライトを前にして、スーは逆らう事が出来ずに、渋々といった形で今も巻き上がる粉塵を一瞬でかき消した。
具体的に言えば、スーは巨大な翼を持つ天使を一瞥しただけ。それでも、人間を遥かに超えた力量を持つ天使や神を従える実力は、相当なものだ。
「……あ? ……あの、ク、ソ、ガ、キ」
「さて、どうしましょう。今日はサンちゃんに全てを任せましょうそうしましょう」
だが、粉塵が暴風によって消し飛ばされ、大地が露わになった時。女帝と王の額に、似付かわしくない青筋がピキリと浮かぶ。
二人の視線の先にある大地には、一つのメッセージが掘られていた。しかもご丁寧に『喜笑』の顔までもが。
『馬鹿が見る~♪ あれ? もしかして……『やったか?』とか思ってるのか? 何て恥ずかしい……何て恥ずかしいのだろう。もしも俺がオッサンとオバサンの立場なら……死んだ方がマシかと思うかもしれない。いや、そうでなくともふとした時に思い出して悶絶する。間違いない、だが、大丈夫だ。俺は忘れてやる。何故なら心が広いからだ。そう、広いんだ。たかが一揉み一燃やしで怒るようなヒステリーと咬ませには』
ここまでは二人とも読んだ。二人とも我ながらよく読んだ方だと自分を褒め称えながら、静かにただ静かに、文字を未だにせっせと書いている青年の方へと視線を向け、
「あ……見つかっちゃった。どうだった? 俺からの魂の手紙は」
『殺す』
「だよねぇ」
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