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数分後――一人の復讐者が、大地を蹴った。
彼の名は、ゲート・ファラモス。この広い世界で、最強の魔力量を誇る少年だ。
その実力は、何でも有りと、例えば、世界が終わってもいいという条件をつけたのならば、スーやライトを凌駕するほど。そう、何でも有りならば。
だが、ゲートはそんな事をしない。当たり前だ。誰かが止めてくれなければ、世界が崩壊してしまう力など、おいそれと使えはしないのだから。
そして、ゲートにはこの世界で唯一守るべき存在がいる。妻であり、魔王でもあるロゼ・ファラモスその人。
ロゼがいたからゲートは人間に戻れた。ロゼがいたからゲートは怪物のまま生きずに済んだ。
恩人であり、最愛の妻であり、ゲートにとって命なんかよりもはるかに重い存在。だからこそ、少年は苛立ちを隠しもせずに突き進む。
空中に魔力を散布させながら、ゲートは気配を辿る。標的の能力を考えれば、争いの跡など見つけることは出来ない。
ならば、グラバラスを包み込む量の魔力を放ち、標的の居場所を辿るまで。刹那、ゲートの顔色が狂気に満ちる。
「ロゼの下着を盗んで、まさか生きていられるだなんて……思ってねえだろうなぁ?」
標的の位置を把握したゲートは、すぐさま転移する。空間が歪み、凝縮。奇妙な浮遊感に揺られた先には。
『殺す』
「だよねぇ」
異常に殺気立ったスーとライト。苦笑する喜笑の姿が。ゲートは息を吸う間もなく、手元に魔力を込める。付与されているのは、破壊神の力を色濃く受け継いだ真っ赤な光。
融合した時よりも格段と威力は落ちるが、それでも神級程度ならば一撃で葬ることが出来るだろう。その魔力の塊を、ゲートは三人の遥か上空から、躊躇うことなく射出させた。
「ッッッ」
「な」
「ふぇ? ん、今のはなかなか可愛らしい声だったのではないか? 例えるならば、そう。小さな少女……そう、少女だ。その少女が驚きを示す時に使うような声だったのかと感じるぞ。素晴らしい……俺は何時の間にか少女になっていたよーーーーーーー!!!!」
スーとライトが多大な重圧を感じ、すぐさま身を翻した瞬間。真っ赤な光は空気を切り裂き、ペラペラと喋る青年の元に直撃した。続けて、馬鹿の断末魔が空中に木霊する。
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