最強達から逃げた笑顔の行き着いた先には

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表現できないような爆音と衝撃が空気を震わせる。それは、硝子を引っ掻いた時よりも耳に触り、亡者の囁きよりも不気味な音だった。 その衝撃を受けた『喜笑』は、無様に地に伏し、ピクリとも動かない。見つめるのは、汗を垂らすスーとライト。 彼らは視線の向かう先を『喜笑』から逸らし、上空のゲートへと向ける。 両者の瞳には、僅かながらにも責めるような色が浮かんでいた。 「ゲートさん。あれは、私の獲物だったのですが……」 「……ゲート。何、横取りしてくれてんだ」 しかし、両者は『喜笑』の事を心配した訳ではない。ただ、自分達の鬱憤の対象を横取りされた事に、怒りを覚えていたまで。 故に、ゲートは呟く。「…………殺す」尋常じゃない殺気を込めて。「殺してやるぞ!!」 一瞬だけ静寂が走った。そして、スー達もゲートの殺気の矛先が自分に向いていない、と理解した瞬間。 既に死地と化した土地に、破壊の、神級の、天使級の、神をも殺す処刑器具の滝が降り注ぐ。だが、断末魔は響かない。 「くんかくんか。洗濯してあったというのが悔やまれる……誠に惜しい。しかし、まぁ、あれだ。うん……あんなに綺麗な嫁がいるというのなら、こうしてお裾分けくらいするのは普通だと思うのだが、どう思うだろうか?」 土砂が天を覆い、日の光すらも遮られた空間で青年の声が響く。常人では、視界に何も映らない状態だったが、ゲートは見た。 全ての攻撃を受けながらも、平然と。いや、慣れてしまったというように笑顔を見せる『喜笑』を。ついでに、全裸だった。 その『喜笑』は、ロゼのお気に入りのシルクの白いパンツを鼻先に持っていって、奇妙なダンスを踊っていた。確か、あれは喜びの舞だとか何だとか言っていた筈。 しかし、そんな事はどうでもいい。ゲートの脳からぷつりと何かが切れたような音が響き、 「キサマァァァアアアアアアアアアアアア!!!! 魂すら残らないと思えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」 金髪がどす黒い闇へと染まり、他の二人がどん引きするくらいに吠えた。それでも、役者はまだ揃っていない。 刹那。 「相変わらず激情家だな」 声が響いた。それは、どこか人を馬鹿にしたようで、人懐っこいような声だった。
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