髭の恋人 Ⅰ

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ガシャン。 グラスが床に落ちて割れる音が響き、辺りは一瞬でシーンと静まり返った。 「申し訳ありません」 「ちょっと、どうしてくれるのよ」 大通りに面したオープンカフェ。 水を運んでいたウェイトレスと、髪をかきあげようと上げた女性の手がぶつかった。 水の入ったグラスが宙を舞って床に打ち付けられた。 女性のスカートと床に水が広がっている。 しっかりと頭を下げた後、ウェイトレスはスタッフルームにさがると、真新しいタオルを持って戻ってきた。 「本当に申し訳ありません」 たいして濡れていないスカートを丁寧に拭いている。 .
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