髭の恋人 Ⅰ

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「は? どういう意味?」 「帰りたいなら帰ればいい。それだけだけど」 男は全く表情を変えることもない。 「君みたいな傲慢な女には興味ないな」 「何なのよ、後で謝ったって知らないわよ」 すっかり気分を害した女性は、イライラとカフェを出ていった。 それでも涼しい顔でコーヒーを飲む雅樹と呼ばれた男に、店員だけでなく周囲も称賛を込めた眼差しを向けていた。 これが藤堂雅樹という男の本来の姿。 しばらくタバコを楽しみ、お代はいらないと言う店長に、雅樹さんは何事もなかったように2人分のコーヒー代を支払った。 そしてまた来ると笑顔で言い残して出ていった。 「不思議な人だったわね」 「はい」 .
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