髭の恋人 Ⅰ

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その日も店長に言われて、いつものように6時でスタッフルームに下がっていく。 それを見計らったように雅樹さんが店を出た。 夕焼けの下、いつもなら立ち止まることなどないのだけど、その日は歩道の手すりに凭れて空を仰ぐ雅樹さんがいた。 「お疲れさまです」 そんな声に振り向き、私が出てきたことを確認。 「梓ちゃん、お疲れ」 「あ、お疲れさまです」 まさか私を待っていたとは思わなかったから、驚いて立ち止まった。 「夕飯一緒にどう?」 それはあまりにも突然の誘い。 お店にいる時は誘われたことなどなかったのに。 .
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