髭の恋人 Ⅰ

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「あんずの木です」 最近駅前にケーキと紅茶を出す、かなり高級なお店が出来ていた。 テレビや雑誌でも紹介されていて、行きたいとは思っていたけど高そうだし、学生の私ではなかなか行けずにいたお店だった。 「ご馳走しようと思ったんだけど……嫌なら仕方ない。1人で行ってくるよ」 横を歩いていた雅樹さんが歩調を速めて行ってしまった。 「ちょ、ちょっと……」 あんずの木なら話は別、急いで雅樹さんを追いかけた。 「男性1人じゃ入りづらいでしょ、仕方がないから付き合ってあげます」 横を歩いてついてくる私を面白そうにチラリと見て、雅樹さんは満足そうに歩き続けた。 「で、どうして私を誘って下さったんですか?」 「ん? 君、可愛いから」 .
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