1541人が本棚に入れています
本棚に追加
給湯室ではマリアがコーヒーもいれずにただ涙を流している。
俺の声に驚いたように振り返った頬は濡れていて、思わず抱き締めていた。
「しごとちゅうなのにごめんなさい。あなたがにほんにかえるとおもったら……たえられなくて……」
一瞬目眩がしそうな衝撃をくらって、心臓を鷲掴みにされたみたいに胸が苦しくなった。
「ヤバイ! それ反則」
抱き締めた腕を緩めて、泣いているマリアの顔を覗き込むと、ふいっと顔を背けるから、両手で頬を挟んで無理矢理正面を向かせる。
「みないで……」
涙で崩れた化粧を気にしたって今更だろ?
泣き顔だって俺にしてみれば十分魅力的だ。
「一緒に日本に来てくれる?」
次の瞬間にはそう言っていた。
.
最初のコメントを投稿しよう!