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「勝敗に関係する話だが、こいつは内装も凝っていてな。壁に設置するタイプの液晶テレビだの保温性抜群の浴槽だのが完備されている。トイレだってあるぜ。さて、こいつを値段を十円玉に換算すると……ここら一帯はどうなっちまうかな」
「ははは、僕も朧月君も生き埋めやな。そうしたらスタンバってる日下部君が僕を全力で叩きに来る。僕の負けや」
これ以上やると本気になってしまう。
だから、この勝負に対しては敗北を認めざるを得ない。
しかし、これはまた意外性のある戦略だった。
金を何かに変えるのではなく、金そのものを駆使した策はまさに予想外。
札束が形を為すことばかりに警戒をしていた時点で、この結末は避けられなかっただろう。
「しかしまあ……お金を武器にするってなあ。凄い戦略だ」
「そうでもねえよ。皮袋とかに小銭を大量に詰め込んだら凶器が仕上がるんだぜ。確か名前はブラックジャックだったか」
「なるほど。そんなのもあったね。それにしても驚きだ。まさか僕がこんな方法で負けるなんて……きっとこの家の原型は凄かったんだろう」
「……っぷはは! ま、まあ……くくくく」
冷泉の言葉に朧月が笑う。
クールなイメージが強かったからこそ、このような顔を見せるのは予想外だ。
「お……おい、日下部。空箱落とせ」
「はいはい、わかったよ」
屋根の上から日下部の声が聞こえた。
どうやら、ここから弾丸を撃ってきたようだ。
未だに種明かしされていないのだが、あの鉄球の群れはなんだったのか。
いかなるものを拡大解釈したのかが気になって仕方がない。
そう思った矢先に、ジグソーパズルが詰め込まれていそうなサイズの箱が降ってきた。
件の箱に書かれていた商品のタイトル名を冷泉は読み上げる。
同時にショックを受けたかのように地面に両膝をついた。
「あにまるふぁみりー。おがわのほとりのちいさなおうち…………」
「ぶはっ……け、傑作だ! この教師、おままごとの道具に負けやがった!」
冷泉はこの勝負を二度と忘れないだろう。
この屈辱的な模擬選のことを。
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