第二章【最強の能力者】

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【1】  白昼、間宮唯は薄暗い道を歩いていた。  逢魔学園を抜けてからはネット喫茶を梯子して銭湯を借り、誰かを助けることでお金を貰う生活をしている。  悪く表現すれば、今の唯はホームレスに近い。  このような生き方をせねば学園からの追手に簡単に見つかってしまう。 「やっぱり……気持ちの整理ができてないなぁ。でも、先輩に会えて嬉しかった……無事で良かった」  コンクリートの壁にもたれたまま座り込み、安堵の笑みを浮かべる。  そういえば、ここ最近あまり笑えていなかった。 「今の名前は朧月かぁ。朧月先輩……変な名前」  鞄からタブレット端末を出し、電源をつけようとする。  その画面に映った自分の口角が上がっているのを見て、自分が笑っていることを再認識した。  これが自分の笑顔。  昔のまま変わらない微笑。  心の中で呟き、タブレットの電源をつける。 「朧月で検索……と」  手慣れたタイピングで文字を打ち込んだはいいが、ネットに出てくるのは人物名ではない朧月。  バーやヘアサロンなどといった様々な店に採用されるネーミングらしい。  検索結果に不服な表情を浮かべた唯はタブレットを鞄にしまって立ち上がった。  とりあえず食事を取ろうと考え、懐から財布を取り出す素振りを見せる。  そこに、 「逢魔学園の元七人岬……間宮唯だな。貴様を拘束する」  二人の大柄な男が彼女の行く手を遮った。  一本道を挟み込むように立たれているので、逃げることは不可能に近いだろう。  来ている衣服からして校内の作業員だろう。  ひとりはスキンヘッド。もうひとりはサングラス。  この程度しか特徴がなく名札もつけていないので、唯は二人をそれぞれ『スキンさん』と『グラサンさん』と呼ぶことにした。
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