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「大したことのない能力だけど、罪を罪と感じない時点で倒すべきシンカーであることには変わりない……か」
クロアゲハの群れが間宮唯を含む三人がいる空間を包み込む。
その瞬間、
「ぐぁああああああああ!」
「ご、ごがぁああっ!」
二人の敵が悲鳴を上げた。
スキンヘッドは腹から血を流し、サングラスの方は曲がらないほうに曲がった両手の小指に驚愕している。
これこそが間宮唯の能力。
自分でも最強の能力だと思えるほどの圧倒的なスキル。
「な、なん……なんだこれは! どうして、こんなことに!」
「どうしてですか? それは貴方たちが私より強いからです」
「意味が……意味がわからんぞ!」
スキンヘッドが狼狽する。
その瞳はかつての冷静さを失っているようだった。
無理もないだろう。
二人に起こった現象はあまりにも理不尽なのだから。
他でもない唯自身がそう思っているぐらいだ。
「悪平等。そういえば理解できるかな? 私のドグマは結果の平等を導くの。つまり私が貴方たちとタイマンで殴り合いをする場合、スキンさんはお腹から出血するぐらいのハンデがないと相打ちにならないってことだね」
徒競走をする場合、選手の速度は皆違う。
では、どのようにすれば全員が仲良く同着できるか。
答えは簡単。スタートラインを変えればいい。
然らば全員がゴールテープを切ることができる。
平和主義だった彼女は皆が争わない世界を望んでいた性善説論者だった。
だが、性悪説を認めざるを得ない真実を目の当たりにし、この能力を得たのである。
唯の理想の世界を導くためには、この能力になるしかなかった。
「もっとも、二人でまとめて来られると私は負けてしまうけれど」
「ふ、二人! そうだ、先輩とオレが二人で畳み掛けりゃいいんだ!」
唯の言葉にサングラスの男が反応する。
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