第二章【最強の能力者】

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 だがスキンヘッドは後輩を牽制した。  どうやら平静を取り戻したらしい。 「単純に考えれば裏がある。今まで追手を返り討ちにしてきた実力者が、どうして相打ちになる能力なんだ?」 「そ、そりゃあ逃げたからですよ! 逃げる途中で不意打ちをしたって考えればどうです? つまり肉体的な力量は等分できても、頭脳までは分けきれないってことっす」  一抹の不安を抱きながらもスキンヘッドは相棒の結論に同意していた。  そして、それが間違いだと気づくのはそう遅くなかった。  少女は逃げなかったのだ。  クロアゲハの形をしたオーラを消さぬまま、そのひとつを自分のいるほうへと呼び寄せていたのである。 「な、なんだ……なにが起きるんだ!?」 「先輩、この状況どうすれば」  間宮唯が主の元へと帰還した蝶々を握り潰す。  瞬間、彼女から新たなオーラが放たれた。  ギリシャ文字で記された零から九の数字が彼女の周囲を駆け巡る。  その光景は不思議であった。  通常、ドグマはひとりにひとつしかない。  だが、間宮唯はそれをつかさどるオーラを二種類出しているのだ。  数字のオーラに包まれた彼女を観戦するかのように蝶が飛び交っている。 「どうしようもないと思うよ。こうなったら、もう手遅れ。能力によるけれど絶対に勝てない。私のドグマの神髄は自分だけが有利な平等。俗にいうアウェイクン現象……っていうのかな」  アウェイクン現象。  それはドグマの新たな可能性を自身で生み出すことをいう。    間宮唯が解釈する悪平等は文字通りの悪なる平等。  自分自身がトップとなり全ての他者に勝利することだ。  ドグマに都合のいい持論を叩きつけて新たな能力を発生させる。  それこそが、シンカーが覚醒する前提条件なのである。
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