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朧月は不安だった。
受け入れることの難しさは誰よりも良く知っている。
自分が生き返った時もそうだった。
二回目の人生が与えられた事実を前にして、喜んでなどいられなかったからだ。
死の直前、首筋を通り抜けた痛覚は二度と忘れられないものだった。
蘇りは、二度目の死を約束するということだ。
もしも再び死んだとして、また復活できるチャンスがあるとするならば、朧月はそれを放棄するだろう。
唯が果たして生き返った人間の立場になって朧月を蘇らせたのかどうか。
その問いに、彼が結論付けた回答は「ノー」である。
現に自分は二度目の人生に少しばかり嫌気がさしている。
学園を抜けてからはハーフキラーとして様々な事柄に首を突っ込んできたが、彼を潤すものはなかった。
死にたくないから生きる目的を探す。
そのような虚しい人生を歩ませることを間宮唯が望んでいないことはわかる。
だからこそ、変わった彼女が許せなかった。
「僕だって変ったよ。色んな人に出会って、色んなことをして、前とは違う夢を掲げて生きてる。唯さんだって同じじゃないかな? 能力の変化は人格の変化かもしれないけど、だからといって唯さんの考えが根っこから変わったわけじゃないと僕は思う」
「そうか……そうかもしれねえな。だが、俺はどうしてもユイが変わったことを認めたくねえんだよ」
悔しそうな声を出した。
日下部は彼の表情を見ることなく、ただただ子供の姿を瞳に映している。
「皆、変わっていく。資本主義なアンタにならわかるはずだ。時代が変わって売れるものと売れないものがコロコロと変わっていく。人の心もそれと一緒だ。あ……そうそう、ひとついいかな?」
「あん?」
「子供に実戦でドグマについて教えたいんだ。本当は暴力を教えるのは教育者としてどうかとは思うけど、シンカー犯罪者がいるのは事実だからね」
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