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夕暮れの教室。
俺は一人で一面オレンジのガラス窓を見渡していた。
西日はもう少しで山に阻まれ姿を消すだろう。
日陰の肌寒さと、窓際の局地的な暖かさが混ざった教室は、万年体調不良の自分にとっては酷な環境だった。
立ちくらみがする体を無視して、いつも帰り際に立ち寄る窓際の席に歩を進める。
歩きながら、右手に握りしめていた桜の花びらが、手汗を帯びていくぶんシワシワになっているのを感じた。
ただ、桜の花びらと言っても本物ではない。
当たり前だ。もう季節は秋。桜なんてどこにも咲いていない。
この花びらは、今日渡された理科のプリントをそれらしく切っただけの紙切れである。
目を焼き付けるような西日に目を伏せながらお目当ての机の脇に立ち、手のひらの紙切れに手をやる。
いつも通りそれを机の上に置こうとして、やめた。
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