第1話

3/11
前へ
/11ページ
次へ
逃げ場を探すように、視線が窓をはさんで立って入る枝だけの桜の木と、その向こうの体育館に向く。 体育館の中では生徒たちが部活動にいそしんでいた。今日の体育館の割り当てはバレー部とバスケ部らしく、聞きなれた掛け声が耳に入って来た。 その掛け声と一緒に、男性教師の怒鳴り声が聞こえてくる。 目を凝らして体育館の中を見ると、背の高い女子が教師に怒られている所だった。 (またミスったのか) 怒られて情けない顔になっている女子を見ながら、俺はため息をついた。 教師の話が終わると、女子はコートの外から出てその周りを走りはじめた。 いつもの光景であった。 あの女子は日に数回、こうしてコートから外され他の選手が練習している中、走らされる。 素人目でもわかる下手さだった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加