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「うん」
誰の返事もない。自分のか細い声が聞こえなかったかもしれないから、一言付け加えた。
「なおるよ」
「ふーん、そっか~」
サクラがそう言うのと同時にチャイムが鳴って、話はそれっきりになった。
号令通りに起立し、頭を下げながら思った。
これから自分がどうなるかはわからない。
お先真っ暗で、将来なんて何も期待できなかった。
でも、言った瞬間だけ、煩わしい事を全て忘れて完治するような気になっていた。
ほんの一瞬だけだったけど。
※
その後、その無遠慮な女子のことが気になって、気づくと目がサクラを追っていた。
観察していくと、サクラが常時あの無邪気な笑顔でいるわけでは無いことに気付いた。
どんよりと暗い顔。時を追うごとに、その表情が増えて行った。
自分自身が足を引っ張っている部活動がその原因らしかった。
そうしているうちに、5月の上旬になった。
この地方では春が来るのが遅く、ゴールデンウィークあたりに桜が咲きはじめる。
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