第1話

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窓一面に満開になった桜はなかなか見事だった。 ある日、窓際のサクラの机の上に桜の花びらが落ちていた。 窓が少し開いていて、うまい具合に入って来たらしい。 サクラはその花びらをその日一日筆箱に入れてながめていた。 そして次の日、サクラは嬉しそうに友達と話していた。 何でも昨日、すごくいいことが起こったらしい。 「もしかしたら、この桜の花びらのかげかも!」 かなり飛躍した発想だったが、珍しい出来事ふたつを結びつけるのはそれほどおかしい話でもないのかもな、とその時は思った。 その日以来、サクラは毎朝机の上に桜の花びらが落ちていないかを確認するようになったようだ。 それで、落ちていないとがっかりする。 そんなことをしているうちに満開だった桜も散ってしまった。 また浮かない顔に戻るサクラ。 俺がプリントで作った桜の花びらをサクラの机の上に置いたのは、ほんの出来心だった。
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