黄昏に沈みたい。

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   あの瞬間、会えない時間が続いていたせいで、俺は流華さんに触りたいという思考回路に支配されてはいなかったか。  そうして、いつものように彼女を観察することを、怠ってはいなかったか。  ……その後ちらついた愛美さんの存在に動揺して、流華さんを見る目が曇ってはいなかったか?  すっかり駅は見えなくなって、気分が足元まで落ちていく。そのまま俺の身体まで、深くに沈んでしまいそうだった。 ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚  そのまま結局流華さんのマンションの最寄り駅には降りないで、俺はゆっくりと家に帰りついた。  だらだらしながら帰ったせいか、普通に学校から帰るのとそう違わない時間になっていた。最近帰り着いていた時間よりずっと早くて、アンがやたら喜んで出迎えてくれた。  思わず浮かぶ笑みに少しの違和感をおぼえながら、俺はアンの頭を撫でる。アンが動くものだから、鼻先が手に触れた。  ひんやりと冷たいアンの鼻先は湿っていて、彼女が一生懸命生きていることを急に意識してしまう。  ……この半年、ほとんど上の空でアンに接していたことに気付いたから。  口の中で小さくごめんね、と呟いて、家の中に入った。 .
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